【読書感想】『ライフ・シフト』を読みました

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)  リンダ グラットン, アンドリュー スコット/著

 


 人生100年時代と呼ばれる昨今のバイブル的存在の本書。人生が3ステージ―—いわゆる教育→仕事→引退——では安泰な人生を送ることができない。と言われている中、我々はどのように働いたらいいのかを示してくれる本になります。

 大枠の内容としては世間で言われている通りで、【しっかり老後に備えよ】【テクノロジー、AIの進歩によりたくさんの人が職を失う】だとかのよく知られている内容でした。(むしろ本書の影響でこういったことが世間一般で言われているのかなと感じる部分もありますね。)

 しかし、章が進むにつれて3人の架空の人物を使ったシミュレーションをしていくように内容が進みます。これが具体的でわかりやすく、彼らがどう生きたかが記述されていきます。その内容も、【無形の資産】などの参考になる考え方が多く、それを具体的に可視化させて、彼らの人生がどう変わっていったのか、深い内容がとても面白く感じました。

 いまだに様々な人に読まれ、要約版や漫画版や続編(2)などさらなる展開も見せている本書はまさに新時代を生きる人たちのバイブル的存在だと感じました。

 


本書から学べる要素

 人生100年時代

・人類の寿命は長くなり続けている

 個人の寿命は医療制度や環境の変化により、長くなることが予想されています。そして今までの社会や制度が長寿化に対応できていないのです。既存の3ステージの生き方【教育→仕事→引退】という生き方を選択することは難しくなってきています。この3ステージの生き方の選択は長い人生を残酷でつまらないものにしてしまうかもしれません。70代、ことによると80代まで働き続けても貧困の老後が待っていることになりかねないのです。これからの時代を安定したものにするため、従来の3ステージに代わる【マルチステージ】の生き方が今後の100年ライフでの生き方の定番になっていくでしょう。

 

・新しい職種とスキルが登場する

 これからの未来、ほぼすべての職がロボットとAIに代替されるか補完されることになり、あらゆる業務がこの影響を受けます。

 企業は時代に合わせ新しく企業のエコシステム(生態系)を作り、多くの専門性と多様性に特化した新しい雇用を生み出します。そして、スキルを買いたい企業と働き手をつなぐテクノロジーは安価になり、洗練されていきます。「ギグ・エコノミー」「シェアリング・エコノミー」といったより柔軟な働き方も出てきています。

 個人は70代80代まで働くとなれば20代までで身に着けたスキルの学びなおしに再投資する必要が出てきます。その移行を多く経験する未来では【投資】を怠ってはならなりません。長寿化の恩恵で長く使える時間を娯楽(レクリエーション)から投資・再創造(リ・クリエーション)に使う時間に回すべきなのです。

 

 無形の資産

・人生の「資産」を管理する

 100年ライフでは貯蓄の重要性は高まっています。しかし、お金と仕事だけに目を向けていては人間の本質を無視することになります。
 お金は重要ですが、ほとんどの人はそれ自体を目的に生きてはいません。優しい家族、素晴らしい友人、高度な知識やスキル、精神的肉体的に健康的で恵まれた人生を人は「良い人生」と考えます。
 これらの市場で売買できない要素を見えない【無形の資産】ととらえて、管理していくことも100年ライフにおいてとても重要なことといえます。

 この【無形の資産】を本書は【生産的資産】【活力資産】【変身資産】の3つのカテゴリーに分けて考えています。

 

・生産的資産

 主にスキルや知識仕事で構成されます。仕事での生産性を高めて所得を増やすことに役立つ資産となります。

 長く生産的な人生を送るためにはスキルや知識に投資することは不可欠です。教育や学習は大きな金銭的価値を生み出します。大卒者の40代の平均年間給料が8万ドルに対して、高卒者の40代は3万ドル程度。この格差はさらに高スキルが求められる今後の未来ではさらに増え続けると思われます。

 

 具体的に将来、価値を失いにくい学ぶべき知識は【イデアと創造性をはぐくむこと】【人間ならではのスキルと共感能力を発揮できること】【思考の柔軟性と敏捷性など、どの分野でも役立つ汎用スキルをはぐくむこと】になります。

 

・活力資産

 肉体的、精神的健康と幸福、友人関係やパートナーや家族との良好な人間関係となります。この活力資産を潤沢に蓄えることは「よい人生」を送る上での重要な要素となります。 


 

・変身資産

 新しい多様性に富んだネットワークと、新しい経験に対して開かれた姿勢を持っていること。従来の3ステージの生き方ではあまり重要視されていませんでしたが、マルチステージの人生ではとても重要な要素となります。変身資産は人生のステージの変更につきものの不確実性への対処能力を高めるものです。


 変身を成功させるためにはまず、ある程度【自分について理解していること】が不可欠です。今の自分を知り、将来の可能性を知らなくてはなりません。


 そして、【活力と多様性に富むネットワーク】を持っている人ほど円滑な移行を遂げやすい。移行に大事なことは何を知っているかということよりも、誰を知っているかの方がたいせつなのです。


 最後に【新しい経験に対して開かれた姿勢】があること。新しい変身は考えることではなく、行動することによって到達するものです。そうした新しい経験に開かれた姿勢こそ変身資産に活力をもたらします。

 

 新しいステージ

 100年ライフのマルチステージの働き方として以下3つのステージを上げています。

エクスプローラ

 エクスプローラー(探索者)は多様なものに触れ、実験が行われるステージです。
自分について理解して、自分が何を好み、何か得意なのかを探して回る期間なのです。

 新しい街に移り住んでその土地の人たちと知り合ったり、知らない国を旅して自分の生き方について考えたりします。

 一部の国でギャップイヤー(高校卒業を1年遅らせて、長期の旅行やボランティア活動を経験する期間)が定着していますが、それをもっと極端に進める時期でもあります。

 長く生きる時代には選択肢のことをよく理解して、自分と相性のいいものを見出すことがとても重要となります。

 

・インディペンデント・プロデューサー

 従来のキャリアから外れて自分のビジネスを始めた人がこのステージを生きます。このステージを生きる人は、ビジネスの成功よりも活動自体を目的としています。金銭的資金を蓄えることよりも、組織に雇われずに独立した生産活動に携われることに大きな意味を持ちます。

 

 このステージで生み出した評判や人脈は将来に経験するステージで貴重な【無形の資産】となるのです。

 

 年長時代の起業家たちは知的財産権を守ろうとしてきましたが、新しい時代のインディペンデント・プロデューサーたちは知的財産を公開し、「シェア」することを重んじています。まねされてコピーされることは高い評価の証であり、コピーされることによって評価や価値が高まるのです。彼らはこういった模倣や協働型のネットワークを中心に身を置き、高い評判や充実した人脈を積み重ねていきます。

 

 

ポートフォリオ・ワーカー

 異なる種類の活動を同時に行うのがポートフォリオ・ワーカーになります。スキルと人的ネットワークがすでに存在する人生の土台を築いた人たちにとって魅力的なステージとなります。
 所得の獲得を主とする活動をしながらも、例えば、地域コミュニティと関わりを主にする活動、趣味を極めるための活動、親戚の力になるための活動などに週1,2日携わったりします。

 しかし、長い人生を生きる中で一定の行動パターンが染みついてしまうことが問題で、従来の第2ステージの仕事のステージを生きただけでは、そうした柔軟性が身につかないのです。この移行に成功する人は人生の早い段階で準備に取り掛かります。小規模なプロジェクトを通じて実験を始め、自分がなりたいポートフォリオ・ワーカーのロールモデルを探すのです。