【読書感想】『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』を読みました

AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣 越川 慎司/著


 リーダーシップ、マネジメントに興味がわき、まさにビジネスに寄った考えの本をよんでみたくなりました。

 本書はAI分析でたくさんの会社からその業績が高いトップ5%以内に入るリーダーの習慣がどのようになっているかを分析した本になります。彼らがどういった仕事の取組みかた、考え方をしているかが書かれています。

 

 そして、本書がコロナ後に書かれた本であることも結構重要な点です。今後変化の激しい社会が背景にあること、そしてテレワークが主体での仕事への考え方が学べます。

 

 とても面白いのがトップ5%社員には業種は違えど共通点が多くあります。1つ1つのコミュニケーションがとても共感を重視したものであったり、時間に対する考え方はとても余裕を持つようにしていたり、他にも話し方や歩き方まで、様々な角度のトップ5%リーダーの特徴を知ることができます。

 

 非常に勉強になる本で、自分も彼らトップ5%リーダーの考え方を理解して、日々の生活や仕事に取り入れていきたいと思える良書でした。

 


本書からたくさんの学べる要素がありますが、特に面白く特徴的だった部分の抜粋。

【トップ5%リーダーの意外な特徴】

歩くのが遅い

 2020年1~3月期、5社に協力していただき、人の流れが活発なフロアやオープンスペースにカメラを設置して調査したところ、明らかになったのは移動スピードの違いです。

 トップ5%リーダーの59%が明らかに移動スピードが平均よりゆっくりと移動していました。理由を追求すべく本人たちにヒアリングしたところ、「自分ではゆっくり移動しているとは思いませんでした」など反応が多く、意識的にゆっくり歩いているわけではありませんでした。

 

 理由としては明確ではありませんがアンケートで「意図的に時間と気持ちの余裕を作るようにしている」と回答する人が58%いたので歩くスピードに反映されているのだと思います。

 

ほかにも会議が予定通り終わらせる、もしくは早く終わらせるような会議改革に取り組む5%リーダーが一般的な管理より3倍近く多かったのです。

・30分の定例会議を25分に設定
・意思決定の会議は参加人数を絞る


など時間と気持ちに余裕を持たせる改革を進めていました。そうしたことがゆったり余裕を持った歩き方に影響を与えていたのではないかと推測されます。

 

 メンバーから気軽に声をかけやすいことを良しとする5%リーダーは、ゆっくりと歩くことで、時間と気持ちに余裕をもち、話しかけられやすい環境を作っているのでしょう。

 

 

話が短い

 5%リーダーの1on1ミーティングの様子を分析すると、5%リーダーのうち58%は発言回数は多いが、発言時間は短いことがわかりました。この58%の人は自分が話すよりも相手のメンバーの方が長く話していました。逆に一般的な管理職は自分が7割話し、メンバーに3割くらいの話をさせていました。

 

 【コンパクトに話す】理由として、5%リーダーは自分のことを話さず、メンバーに自分自身のことを考えさせる時間を作って、その気付きや学びを思う存分話してもらうことを狙っていました。

 

コンパクトな質問を多くして相手に気持ちよく、そして長く話させます。

 

 

「どうですか?」

と冒頭で聞くことはなく、

 

「例えば私は●●ですが、あなたはどうですか?」

 

のように自分の経験や感想を軽く話してから質問をして、メンバーが答えやすいように工夫していました。長々と自分の経験を話すのではなくあくまで相手が回答しやすいようなサンプルを提示していたのです。

 

 このような【長く話す】ことよりも【コンパクトにまとめて思いが伝わる】ことを意識して、話していました。

 相手が気持ちよく回答しやすいような配慮が、短く話すことに結果的につながっていたのです。

 

メンバーにかなわないと思っている

 5%リーダーの48%は「自分がメンバー全員の能力を上回っている必要はない」と言っています。一方、一般的な管理職では「自分がメンバー全員の能力を上回っている必要はない」といったのは25%以下になります。

 

 5%リーダーは現場のメンバーが自分で考えて自走する組織を目指すうえでリーダーがすべての能力を担って動く必要なないと考えているのです。

 5%リーダーは自らの業務遂行高能力を高めることをあきらめています。自分の能力を高めることより、メンバーの能力を高めるためにチーム全体の調整をすることが自分の責務だと思っています。

 

 また、メンバーに対して上から目線でマウンティングしてしまうと、上下関係ができてしまうので腹を割って話をすることができません。まずは雑談・相談(雑草)しあう関係性の構造を目指し、上から眺めるのではなくメンバーの横に並びフラットな関係を構築しようとしているのです。

 

成果を出し続ける

 5%リーダーは短期で成果を出すこと以上に長期で成果を出し続けることを目指していることがわかりました。

 短期的な成果をだすことであれば能力のある人をサポートして組織の目標を達成できることもあるでしょう。

 

 しかし、若手社員や年配の社員が混在しているチームで成果をだし続けるには未熟なメンバーであっても、いずれ成果を出してもらうことが必要です。

 もし優秀なメンバーが組織を去っても成果を出し続ける組織でなければならないということを5%リーダーは念頭に置いています。そのため評価制度にジョブ型(成果主義)だけでなく、人間関係を重視したメンバーシップ型(年功序列)も必要だと5%リーダーは考えているようです。

 【短期で成果を出す】ではなく【長期で成果を出し続ける】5%リーダーが組織の中で果たそうとしている役割なのです。

 

 

【トップ5%リーダーの自分磨き】

内省タイムで心身をコントロールする

 5%リーダーは振り返る時間を確保するために仕組み化をしていました。リーダーでないトップの5%社員は、無意識に【内省(リフレクション)】をしているのですが、トップ5%リーダーは、手帳やカレンダーにあらかじめ【内省(リフレクション)】の予定を書き込んでいたのです。

 5%リーダーは緻密に計画し自分の予定に組み込み、内省(リフレクション)の結果をメモに残していました。

 

 1週間の内、10分か15分のすきま時間をスケジュールを作り、予定カレンダーにあらかじめ空白時間を確保していました。そこでコーヒーを飲んだり、タバコを吸いながら仕事を振り返りをしていました。


 5%リーダーは成果を出し続けることが目的なので、【内省(リフレクション)】も日常業務の一環としてなるべく仕組み化して、自分のやる気や疲れに依存することなく行動を継続し続ける工夫をしていました。

 

人からチャンスをもらう

 チャンスは人がもたらすものと5%リーダーは信じています。運がいいとか悪いとかそういうものではなくチャンス(=機会)だと捉え、それに多く触れることを心がけています。人とのかかわりを意図的に増やし、人間関係を広げていくことで偶然のチャンスを引き寄せているのです。

 

——例えば、

会社の廊下ですれ違った隣の部門のリーダーに偶然話しかけられて雑談したことがその後の人事異動に影響を及ぼしたり。

 たまたま雑誌で興味を持ったオンラインセミナーに参加してみたら、自分がワクワクするキャリアモデルに出会ったり。

 読書会という読書の感想を共有しあう場をオンラインで作って、様々なジャンルの本のテーマで読書会を開催してみたら、自分の仕事の仕方を変える人が出てきたり。

 

 何が起こるかわからないことに時間を費やすことは一見無駄のことのようにも見えますが、種をまかないと芽が出ないことも確かです。

 ビジネスにしても、キャリアにしても様々なチャンスが転がっていると5%リーダーは信じています。

 

 

【トップ5%リーダーのチーム活性化アクション】

小さな意識改革を目指す

 5%リーダーは【意識改革はできない】と思っており、意識が変わるのを待っていたら5年も10年もかかるので、先に行動を変えて結果的に意識を変えるというプロセスを理解していました。組織全体の生産性を高めることを考え、自分だけでなくメンバーたちの行動改革を促すことに注力していました。

 

 そこで5%リーダーが工夫していたのは、たとえメンバーが失敗しても責めることなく行動の回数を増やすことです。より多く行動した方が学びは多く、次に活かせると信じているのです。【PDCAサイクル】(P=計画 D=行動 C=評価 A=改善の順番で行動の質を高める概念)を何度も回すことで行動を修正し、最短距離で成功にたどり着くようにしていました。

 とはいえ、メンバーは新たな挑戦を躊躇するものです。

 そこで精神的にハードルの低い、ちょっとした行動をメンバーにやってもらい1対1の対話で感想を聞き、フィードバックをすることで小さな意識改革を生み出すことを目指していました

 

 例えば

「これをやった方がいいかも」

「来月1回だけ早起きしてみれば?」

 

というちょっとした気持ちよさで興味をそそるように行動を促していました。背中を押すと同時に小さな実験を提案するのです。

 ちょっとした達成感を味わうことで行動の障壁が大幅に下がることを72%の5%リーダーが理解していました。

 

心理的安全性、雑談をする

 【心理的安全性】があるチームは出金をしていても、テレワークをしていてもチーム目標を達成しやすいことは2019年から2021年の調査で判明しています。

 【心理的安全性】とは何を話しても自分は安全であるという心理状態です。

 過剰な気づかい、忖度は生産性を落とします。気づかいをしながらチームミーティングに臨む状態だと、自ら率先して意見や質問をするメンバーはいません。「発言しない方が安全である」と考えてしまっているからです。

 

 5%リーダーは【ホウレンソウ(報告・連絡・相談)】よりもまず、【ざっそう(雑談・相談)】を目指しメンバーと雑談・相談しあえる関係を作ろうとします。

 ある情報通信サービスおよび製造業の5%リーダーは、チームの定例会議で冒頭の2~3分の雑談をルール化していました。仕事とは関係ない話をして場を盛り上げるのです。

 

例えば「お昼って自炊しているの? コンビニで買ってくる派?私はコンビニの塩おにぎりがすきでね…」などカジュアルな話題を振っています。

 

 5%リーダーは、雑談をすることが目的なのではなく、雑談を通じメンバーの共通点を探っているので。何か共通点を見出せたら一気に距離を縮めることができるからです。 

 会議冒頭の雑談を振る役はチーム内で順番に回していました。メンバーたちに会話をリードさせ自らも発言することで【ファシリテーション力(会議をスムーズに進行させる能力)アップ】と【メンバーの孤立化防止】の効果を狙っていました。